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【後編】仕事や創作のために楽しく篭れる、アトリエのようなお風呂|ホテルプロデューサー・龍崎翔子 BAINCOUTUREと考える理想のバスルーム vol.4

BAINCOUTUREでは、お客さまそれぞれのライフスタイルにあったオーダーメイドのお風呂空間を提供しています。この連載は、そんなBAINCOUTUREの制作チームによって、さまざまな業界の最先端にいる方々の理想のお風呂をつくってみようという企画です。

今回ご登場いただくのは、ホテルプロデューサーの龍崎翔子さん。後半では、前半の記事で伺ったこれまでのお風呂にまつわるエピソードの続きとして、龍崎さんにヒアリングを行いながら、具体的な理想のお風呂のアイデアをCGパースとして表現してみました。

龍崎翔子

株式会社水星 代表取締役CEO / ホテルプロデューサー。1996年生まれ。東京生まれ京都育ち。2015年に水星(旧社名:L&G GLOBAL BUSINESS)社を設立。『メディアとしてのホテル』を掲げ、ブティックホテルブランド「HOTEL SHE,」を京都・大阪にて展開、自社にて所有・経営・運営を行う。全国各地で宿泊事業の経営再生に従事する傍ら、2021年に金沢・香林坊に「香林居」を、2022年に産後ケアリゾート「HOTEL CAFUNE」を開業。そのほか、ホテルの自社予約SaaS「CHILLNN」の開発・運営や、観光事業者や自治体のためのコンサルティングも行う。

【前編】BAINCOUTUREと考える理想のバスルーム vol.4 ホテルプロデューサー・龍崎翔子  へ

龍崎さんと一緒に考える、理想のお風呂

後半では、龍崎さんが作ってみたいお風呂のイメージを伺ってみたいのですが、たくさん気になる事例をあげていただいた中でも、「忘れの里 雅叙苑」のようなお風呂を作ってみたいとおっしゃっていましたね。

龍崎さん 雅叙苑では「お風呂リビング」という言い方をしているのですが、リビングとお風呂が地続きになっているのがいいなと思いました。私もリビングの延長としてお風呂が混在している空間を作ってみたいなと。機能としてのお風呂空間はシャワーブースのみで、リビングにお風呂があるような感じ。

雅叙苑がうまいなと思ったのが、シャワーブースとリビングのどちらからもお風呂空間に入れるんですよね。リビングから見るとシャワーブースは見えないけれど、ちゃんと洗面所を通ってシャワーを浴びてから入ることもできる。

ヒアリング時イメージスケッチ(龍崎さん)平面イメージ
考え方としてはリビングにお風呂があるというよりも、大きなお風呂空間に家具があるようなイメージの方が設計はしやすいかもしれません。

家の中に水盤があるみたいな感じで、空間に穴が空いているような浴槽が理想ですね。もはや浴槽というよりも、床と一体化しているみたいな。脱衣所って一般的にはすごく狭いじゃないですか。脱衣所がもっと広かったらいいのに、って思うので、そういうイメージかもしれません。

空間のイメージは、壁や素材によってかなり印象が変わってくると思います。

私は以前、京都の町家に住んでいたのですが、そこをベースに考えると、モルタルっぽい壁の方が家自体とも合う気がします。アクセル・ヴェルヴォールトというベルギーの造形作家がいるのですが、その方の作る空間がすごく好きで。特徴としては石や古木、リネンなどを使うんですよね。家具もラタンとか、ビンテージの古い無垢のローテーブルとか、そういうものを置きたい。和に寄せるというよりも、色々な文化が入り混ざったような空気感が好きです。

龍崎さんなら、ここでどんな体験がしたいですか?

雅叙苑に行った時には、執筆の仕事が溜まっていたということもあって、お風呂に入って、そのままバスローブ着て原稿を書くという一日を過ごしました(笑)。でも、それがすごくいい時間で。やらないといけない仕事が溜まっている時でも、こういう空間なら気持ちよく楽しめるような気がしています。

もう一つ、こういう空間で絵を描いてみたくて。賃貸だと汚れが気になって思う存分創作ができないのですが、広いお風呂空間なら多少汚れてもそのまま水で洗い流すことができる。アトリエみたいな空間としてもお風呂を使えるかもしれません。そんなお風呂が実現できれば、そのままホテルにしてしまいたいくらいですね。

龍崎さんへのヒアリングからBAINCOUTUREがCGパースを制作

今回制作したパースのテーマは「創作活動のための“お籠もり”風呂」。お風呂に入りながら、すぐ横で創作活動ができるようなクリエイターのための空間を検討しました。ここでは、制作にあたって考えた3つのポイントをご紹介します。

①お風呂とアトリエを共存させる

広々としたお風呂でありながら、創作活動のできるリビングでもあるような、さまざまな役割が共存するお風呂を目指して、機能的な調整を施しました。

具体的には、浴槽近くの水に濡れるスペースと手前のドライスペースを分け、レースのような防水性のカーテンで空間を仕切っています。その結果、機能的には独立しつつも、空間としてはつながって見えるような設計に。

ヒアリング時イメージスケッチ(BAINCOUTURE)

ヒアリング時イメージスケッチ(BAINCOUTURE)

ヒアリング時イメージスケッチ(BAINCOUTURE)

お風呂に入って、手前の開けたスペースで寝転んだり、床でヨガをしたり、入浴後にそのままバスローブで絵を描いてみたり・・・。外からの視線を気にすることなく、思い立ったことがなんでもできる一続きのアトリエのようなお風呂が完成しました。

②創作活動として最適な空間に

お風呂のご相談をいただく際には、窓を大きくするような開放的な提案が多かったのですが、今回は対照的に創作のためのお籠もり部屋として機能する空間を目指しています。

一方で、壁がすべてタイルということもあって、閉塞的で暗い印象を持たせる空間にならないように意識をしました。具体的には、直線が続く固い印象を避けるためにも大きなタイルによって目地を目立たなくしたり、植栽の配置や色味、照明の雰囲気なども含めて、明るい空間を演出しています。

③自然らしさを取り入れる天窓

創作活動のための空間でありながらも、ストイックになりすぎないように、自然光が入る天窓をバスタブの真上に設置。創作活動を妨げない範囲の自然光が浴槽を中心に入ってくるようにすることで、自然の気配を感じられて、のびのびとした気持ちで入浴ができるようになりました。

また、カーテンで仕切られた内側にだけ自然光が入ることで、カーテンの素材がキラキラと美しく反射して、幻想的な印象に。直線的な空間のなかにゆらゆらとした自然のゆらぎが調和するような設計にしています。

龍崎さんからのコメント
床とシームレスな浴槽がまるで泉のようで、どことなく神秘的な空間。開口は最小限に絞りながら、ぽっかりと開いた天窓から光が射しこむ。水面のさざなみがきらきらと浴室の壁いっぱいに反射しそうな、そんなきらめきすら感じます。
この空間でのんびりお昼寝したり、読書したり、絵を描いたりしたい。そして気が向いたらお風呂に浸かりたい。曖昧な過ごし方を叶える、そんなお風呂空間になりそうです。

Text :Takahiro Sumita
Photo:Yuki Nobuhara

Release:2024.02.06

さいごに

さまざまな業界の最先端にいる方々と、理想のお風呂をつくってみようという企画の第四弾として、ホテルプロデューサー・龍崎翔子さんとともに、仕事や創作にもぴったりなアトリエのようなお風呂空間を考えてみました。これからも様々な視点から理想のお風呂を考えていきます。ご期待ください。

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