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【前編】「当たり前」を問い直すデザインはお風呂で生まれる?|プロダクト&インダストリアルデザイナー・横田純一郎 BAINCOUTUREと考える理想のバスルーム vol.10

BAINCOUTUREでは、お客さまそれぞれのライフスタイルにあったオーダーメイドのお風呂空間を提供しています。この連載は、そんなBAINCOUTUREの制作チームによって、さまざまな業界の最先端にいる方々の理想のお風呂をつくってみようという企画です。

今回ご登場いただくのは、プロダクト&インダストリアルデザイナー・横田純一郎さん。近年はミラノデザインウィークへの出展をはじめ、活動の場を海外へと広げています。前編では、横田さんの仕事観やライフスタイル、そして創造と深く結びついたお風呂との関係について伺いました。

横田 純一郎

愛媛県生まれ。Design Academy Eindhoven留学後、デザインオフィス、大手電子機器メーカーに在籍。家具・日用品のデザイン、スマートフォンなどの電子機器のデザイン、インスタレーションデザインなど多岐にわたるデザインを経験。2020年にJUNCHIRO YOKOTA STUDIOを設立し、日用品から電化製品までプロダクトを中心に戦略開発からアウトプットまで一貫したデザイン活動を行っている。2025年・2026年にSaloneSatelliteへ出展。

instagram: @junichiroyokota ↗︎
HP: JUNICHIRO YOKOTA STUDIO ↗︎

「当たり前」にとらわれずに垣根を超えて活動

横田さんは、「デザイナー」と言っても、とても幅広いジャンルで活躍されている印象があります。

横田さん これまでのキャリアでも幅広いジャンルに触れてきたので、あまり制限を設けないようにしているんです。オランダのデザインアカデミーに留学したあとデザイン事務所に勤め、その後はメーカーでスマートフォンやノートパソコン、家電なども手がけてきました。だから、自分の中で「これはできる」「これはできない」と区切る感覚があまりありません。むしろ、ジャンルを横断しながら発見したことや気づいたことを大事にしています。

ジャンルを横断しているからこその、横田さんの「ものづくりの軸」のようなものがあるんですね。

そうですね。「当たり前をちょっと疑う」ということが、僕のものづくりの軸だと思います。どの業界にも、その業界の中では当然とされているルールがありますよね。でも外から見ると、「本当にそれが正しいのかな」と思うことが結構ある。あるいは、ある業界では「価値がない」とされていることも、少し視点を変えるだけで面白くなることも多くある。僕はそういう「もったいなさ」を見つけて、少しアップグレードしていくことに惹かれます。

そういった感覚に気づいたのは、何か大きなきっかけがあったのでしょうか?

メーカーに勤めていた頃ですね。若い頃は、自分の作風やキャラクターにあまり自信がなかったので、とりあえず経験を積むためにいろいろな現場に行っていました。そんななかで工場で品質管理や検証の担当者さんと話したり、いろいろな現場を見たりするうちに、業界ごとの当たり前が少しずつ見えてきた。その中に「これ、もっと違う見せ方ができるのに」と思う瞬間が多々あったんです。それからぼんやりと、自分なりの視点に価値を感じられるようになった気がします。

2020年にはご自身のスタジオを立ち上げられて、自社ブランド「AJOY(アヨイ)」も展開されています。最近、特に力を入れている活動は何でしょうか。

近年は、海外に向けて自分の活動を発信していくことに力を入れています。2025年、2026年と続けて「SaloneSatellite」(世界最大の家具・インテリアの展示会)に出展しました。海外のブランドや企業の方、コレクターの方など、日本で活動しているだけでは出会えない人たちと直接つながれるのがすごく面白いですね。名刺を置いていかれる相手の幅も広くて、場のダイナミックさを感じています。

海外に目を向けるようになった背景には、どんな経験があったのでしょうか。

オランダのデザインアカデミー・アイントホーフェンに留学していたこともあって、デザインは日本だけで完結するものではない、という感覚がずっとありました。感性の合う人や場所と、国を越えて一緒にものづくりができたらいいなと。2020年に独立したのですが、ちょうどコロナ禍の始まりとも重なって、しばらくは思うように動けない時期が続きました。そこを越えて、ようやく本格的に外へ出ていけるようになったのがここ数年です。

日々の中で、インスピレーションはどこから受けていますか。

意識的に引き出しを増やすようにはしています。内装の展示会に行ったり、新素材の展示会に行ったり。その場ではすぐ仕事につながらなくても、後で何かの拍子に結びつくことがあるんです。すぐに使うための情報を集めるというより、一度自分の中に入れておく感じですね。あと、やっぱり街を歩いたり、何気ないものを見たりする時間も大きいです。

浴槽を触って確かめる横田さん

絡まった思考を洗い流すお風呂時間

ここからは横田さんのライフスタイルについてお聞きしたいです。最近は、仕事と休みのバランスをどのようにとられていますか?

最近はもう、仕事と休みの境目がかなり曖昧です。結局、どこにいても考え事をしているので。でもそれが苦しいかというと、そうでもない。むしろ、散歩をしている時とか、ぼんやりしている時のほうが気づきがあることも多いです。仕事だけを切り取って考えるというより、生活全体の中に思考が流れている感覚ですね。

あえてあまりかっちりとスケジュールを決めすぎずに過ごされているのでしょうか。

毎日を規則正しく過ごすことへの憧れもありますが、独立してからは比較的、好きなタイミングで動いていると思います。それは、直感を大事にしているからで。「お風呂に入りたい」「ゆっくりお酒を飲みたい」「これが食べたい」とか、そういう感覚にできるだけ素直に従うようにしているんです。むしろそうやって動いた方が、僕の場合はメリハリができて効率よく働けるように感じています。

生活の中で、特に気づきやアイデアが降ってきやすいタイミングはありますか。

実は、まさにお風呂場で思いつくことが本当に多いんです。僕は、朝起きてシャワーを浴びることが多いのですが、ボーッとしながら温かいシャワーを浴びると覚醒するじゃないですか。 その時にパッと出てくることが割とよくあります。夜でも、お風呂はリラックスできる場所なので、ゆっくり思考を整理する時間として大切にしています。

横田さんにとって、お風呂は創造と結びついた場所なんですね。

そうですね。僕の中では、お風呂って結構神聖な場所なんです。何かが降ってくる場所、という感覚に近いかもしれない。眠る直前まで考えていたことが、睡眠中に膨らんで、それが朝シャワーを浴びている間に整理される。頭の中に溜まっていた不要なものや、よくないノイズみたいなものが流されていく感覚もあります。

例えば、2024年に発表した「WOODS BOX」という製品もお風呂で思いついたものです。パッと見るとただの塊ですが、よく見ると全面違う木材を使っています。 もともとは廃材や端材をうまく利用したいという話があって、どうしようかと悶々と考えながら、お風呂に入ったら思いつきました。シャワーを浴びたりお風呂に入ったりすることで一度フラットに戻れるので、僕にとっては、かなり重要な時間です。

WOODS BOX

WOODS BOX

WOODS BOX

WOODS BOX

ご自宅のお風呂以外でも、これまでで印象に残っているお風呂体験はありますか。

ひとつはフィンランドですね。サウナに入って、そのまま目の前の海に飛び込むような体験があって、あれはすごく面白かったです。初めての体験だったので、印象に残っています。

もうひとつは、地元の愛媛にあった奥道後の「ジャングル温泉」。今は改装されて「奥道後 壱湯の守」 という名前になったようですが、子どもの頃によく通っていました。実家から自転車で行ける距離だったので、一人でも友達とでもよく通っていました。本物の木があって、植物園みたいな空間なんです。

奥道後 壱湯の守:ジャングル風呂 リニューアル前は温室のようなドームに覆われていた

奥道後 壱湯の守:リニューアル後は川沿いを活かした完全な露天風呂となっている

幼少期から、お風呂は身近な楽しみだったんですね。

そうですね。お風呂に行って、サウナに入って、上がってジュースを飲む、という流れも含めて好きでした。今振り返ると、そういう原体験が、自分にとってのお風呂はただ機能的な場所ではないという感覚につながっている気がします。気分が切り替わったり、ちょっと達成感があったり、身体だけじゃなくて気持ちまで整っていく場所だったんでしょうね。

さいごに

前編では横田さんの仕事とライフスタイルの結びつきや、創造におけるお風呂の役割を伺いました。後編の記事では、横田さんとともにより具体的な理想のお風呂を考えながら、アイデアをイメージにしてみたいと思います。ぜひ、お楽しみに。

つづく

Text :Natsu Shirotori

Photo:Yuki Nobuhara

Release:2026.08.04

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