【前編】サウンドデザイナーShimon Hoshinoが語るお風呂体験と音楽の可能性
BAINCOUTUREでは、お客さまそれぞれのライフスタイルにあったオーダーメイドのお風呂空間を提供しています。
実は今回、BAINCOUTUREが大切にしている「bath side living」というコンセプトから着想を得て、音楽アルバムを制作いただくことになりました。依頼したのは作曲家やサウンドデザイナー、調香師、サーファーなど多才な顔を持つShimon Hoshinoさん。
前編ではまずShimon Hoshinoさんにとってのお風呂時間や音楽、お仕事の内容などについて、詳しくお話を伺いました。
つねに朝一番の感覚で仕事に向き合うためのお風呂時間
Shimonさん 一人暮らしのころ、朝昼晩と3回もお風呂に入っていました。香りの仕事をしていることもあって、できるだけ前の現場の匂いを残したくないというか、仕事ごとにリフレッシュしたくて。今朝も早くに別の仕事がありましたが、その方とサウナに入ってから、ここに来たんです(笑)。毎回できれば朝イチで会うような気分で仕事に向き合いたいので、お風呂に入れないときはこっそり洋服を着替えて、次の仕事にのぞんでいたりもしています。
お風呂やサウナに関わるクライアントさんも多いので一緒に入ることもありますし、サーフィンをやる方だったら一緒にサーフィンをしながら打ち合わせをすることも(笑)。そのまま海から上がってその場で曲を作ってしまうこともあります。まわりにも自分と同じようなタイプが多いからか、隙間時間に友人や仕事仲間とジムに行って汗を流すようにしたりと、むしろカフェやオフィスで仕事をすることがほとんどありません。やっぱり、水に入るとフラットになる気がするんです。自宅にもサウナがバスルームにあるのですが、汗をかいたり、お風呂に入ったりするのは、やっぱりいろんな情報を洗い流すという意味でも重要なんだと思います。

めちゃくちゃハードですね。今は東京に来る日を1週間に1度と決めていて、そこにぎゅっと予定を詰め込んでいます。それ以外の日は子供との時間がメインなので、平日は子供と一緒に遊んで、子供が昼寝している2時間くらいでまとめて仕事をする。木曜日が東京に来る日なんですが、Sound Coutureという所属しているチームの打ち合わせやプレゼンなどもできるだけこの日に集約してもらってます。
さまざまな肩書きを持つShimonさんですが、どうやって今の仕事にたどり着いたのですか?
もともと就職できなくて、大学院も落ちてしまって。友人とLittle Rockという今でも六本木にあるバーを始めたり、友人たちからのアドバイスもあり藁をも掴む思いで会社を作って、はじめに来たのが作曲の仕事だったんです。ベーシストを目指していましたが、プロまであと一歩のところで手に炎症を患ってしまい夢が絶たれて、それからサウンドデザイナーにも調香師にもなるなんて思っていなかったので、驚きですよね。サーフィンがきっかけで出会った方々とたまたま仕事になって、今につながっているんです。
僕はBGMという言葉を使いたくないんです。というのも、音楽ってバックグラウンドで鳴ってるんじゃなくて、まわりにあるレイヤーというか膜みたいなものだと思うんです。だから音楽を作っているというより、空気を作っているような感覚。そのためにはサウンドデザインが必要で、そういう目に見えないデザインこそこれからの時代に求められているんじゃないかと思います。

日本人ならではの感覚というか、空気を読むという感覚があるじゃないですか。それは実は日本人にしかできないことであって、その場でしか体験できない空気を作るというのは、日本人だからこそできることだと思うんです。実際に僕に依頼をくれる方も、海外の方が圧倒的に多くて。例えば、能でもタイミングを阿吽の呼吸で雰囲気で合わせているのであって、そこにはBPMが存在しない。本来の環境音にはBPMが存在しないはずなんです。僕もそういうものをデザインしたいなと思っています。
現場だからこそ生まれる“ナマモノ”としての音楽
ショールームを見せていただいて、ある程度目星をつけていたので、すぐにできました。シャワーの音やドアを開く音、浴槽を叩く音など、5カ所くらいでしょうか。これだけでアルバムを作るのには十分だと思います。たくさん録りすぎても印象がぼやけちゃうので、第一印象を大事にして、できるだけミニマルに直感的にサンプリングをするようにしています。
その感覚を忘れないうちに、形にしたいんです。時間が経ったり、次の現場に行ったりすると、その雰囲気に引っ張られてしまうので。だからこそ普段から仕事ごとにお風呂やジムでリフレッシュするようにしているわけですが、今回もこの後1〜2時間あればアルバムができちゃうと思います。1曲あたりだと4〜5分。実際にクライアントと会話をしながら、その場で音を確かめられた方がいいじゃないですか。本当に作ってるの?って、画面をのぞき込まれることもありますが(笑)。
昔から、今のようなスタイルでしたか?
そうですね。一番はじめの仕事がファッションショーのための音楽制作で、とにかくスピード感を求められたんです。僕は音楽畑で仕事をしてきたわけじゃないので、これが普通だと思っていたら、全然違いました(笑)。ファッションショーではショーのギリギリまで洋服を作っていて、それにあわせて音楽を変える必要があったので、ショーの直前に全部作り直しになったり、その場でライブで音楽をやらないきゃいけないようなこともありました。でも、そこで鍛えられたおかげで、今のやり方があるんだと思います。
感覚がアップデートされてしまうと、できないんですよね。今ここで感じたことも、家に帰って自宅のお風呂に入ると忘れちゃうかもしれない。この仕事を始めた頃にはもちろん作り直したこともありました。でも、それは没になるんですよね。やっぱり、現場で生まれたものがベストだった。コロナ禍でリモートワークになっても僕は人がいない時間帯を狙って現場に通っていましたし、気に入った照明のために別荘を建てたという施主さんのために、まだ照明しかない別荘にこもって音楽を作り続けたこともあります。そういう経験を通じて、音楽ってやっぱりナマモノだなと感じます。

予算があるときにはスタジオを借りて、演奏者を入れることもあります。でも、依頼してくれた方とマンツーマンで話しながら作った音楽と、そこから持ち帰って作った音楽だと、できあがるものも変わってくる。目指すところをわかっている人と現場で作るのと、現場を見ていない人たちと作るのでは、どうしても後者は水割りっぽいイメージになる。やっぱりズレが出てしまうんだと思います。
とにかく現場感が大事だと。SpotifyとかApple Musicとかで見ていると、実際に数字にも現れています。僕が個人で作っているサーフミュージックでいえば、海で3〜4分で作ったものの方が「雰囲気がわかる」と言って聴いてもらえる。スタジオで作っていない方が“雑”でいいと言ってくれるんですよね。そのリアル感が求められてるんだと思います。

さいごに
この記事では、Shimon Hoshinoさんが普段のお風呂時間の必要性について、またお仕事としてのサウンドデザインの可能性や面白さについて教えていただきました。後半では、実際にBAINCOUTUREのために制作いただいた音楽アルバムについて、詳しくお話を伺いたいと思います。ぜひ、お楽しみに。
つづく
Text :Takahiro Sumita
Photo:Yuki Nobuhara
Release:2024.11.29

